「そのうち、元請けの仕事が来るかもしれない」
この言葉には、どこか宝くじ売り場の前に立つ人と同じ空気がある。
買ってもいないのに、なぜか三億円が当たった後のことを少し考えてしまう。
家を買おうか。車を買おうか。いや、まずは奥さんに黙っておこうか。
元請け仕事も、これに少し似ている。
「そのうち誰かが紹介してくれるかもしれない」
「真面目にやっていれば、いつかお客さんが見つけてくれるかもしれない」
「腕はあるんだから、いずれ自社案件も増えるだろう」
気持ちはとてもよくわかる。
職人さんというのは、基本的に真面目である。
朝は早いし、夏は暑いし、冬は寒い。
屋根の上では焼き魚の気持ちになり、足場の上では風に人生を試される。
それでも、丁寧に養生をして、下地処理をして、きれいに仕上げる。
これは本当にすごいことだ。
ただ、ここで一つだけ残酷な事実がある。
客は、その努力を見ていない。
職人さんがどれだけ丁寧に仕事をしていても、
客は現場に一日中張り付いているわけではない。
「今日の刷毛さばき、実に美しいですね」
などと言いながら、腕組みして見守ってくれる施主は、なかなかいない。
むしろ今の客は、まずスマホを見る。
外壁塗装を考えたら、検索する。
ホームページを見る。
施工事例を見る。
口コミを見る。
SNSまで見て「この人、ちゃんとしてそうかな」と確認する。
つまり、会う前にすでに審査は始まっている。
こちらが現場で汗を流している間に、
客はスマホの中で、静かに業者選びをしているのだ。
これは少し怖い。
そして、少し現実的である。
どれだけ腕があっても、ネット上に何もなければ、
客からすると「存在していない会社」に近くなってしまう。
これは、まるで町内会では有名なおじさんなのに、Google上では透明人間みたいな状態である。
「俺はここにいるぞ」と叫んでも、検索結果には出てこない。
これではなかなか選ばれない。
元請け仕事は、待っているだけでは増えない。
下請けの仕事は、基本的に連絡が来る。
元請け会社から「この現場お願い」と声がかかる。
しかし、自社案件は違う。
客に見つけてもらわなければならない。
そして、見つけてもらった後に「ここなら安心できそう」と思ってもらわなければならない。
そのためには、少しずつでも入口を作る必要がある。
ホームページに施工事例を載せる。
Googleマップの口コミを集める。
SNSで現場や人柄を発信する。
チラシで地域に会社名を覚えてもらう。
LINEやメールで見込み客とつながる。
どれも派手ではない。
今日やって、明日すぐ問い合わせが十件来るような魔法でもない。
でも、こういう地味な積み重ねが、あとから効いてくる。
たとえるなら、塗装前の下地処理のようなものだ。
見えにくいけれど、そこをサボると後で困る。
集客も同じである。
表に見える派手な広告よりも、日々の施工事例や口コミの積み重ねが、じわじわ効いてくる。
客は突然、問い合わせをするわけではない。
「あ、この会社よく見るな」
「施工事例がちゃんとあるな」
「口コミも悪くなさそうだな」
「代表の顔も出ているな」
「なんとなく安心できそうだな」
この“なんとなく安心できそう”が、実はとても大事なのだ。
人は最後、理屈だけで選ばない。
「ここなら変なことはされなさそう」
「ちゃんと説明してくれそう」
「怖い職人さんじゃなさそう」
そういう感覚で問い合わせをする。
だから、自社の仕事を増やしたいなら、ただ待っていてはいけない。
待つ職人から、見つけてもらう職人へ。
連絡を待つ会社から、問い合わせが来る会社へ。
「そのうち元請けが来るかも」と空を見上げているだけでは、なかなか来ない。
元請け仕事は、渡り鳥ではないのだ。
来てもらうには、来てもらうための準備がいる。
技術はある。
真面目に仕事もしている。
それなら次は、それをちゃんと外に伝えること。
客に見つけてもらう入口を作ること。
選ばれる理由を見える場所に置いておくこと。
元請け仕事は、待つものではなく、迎えに行くもの。
といっても、インターホンを押しまくれという話ではない。
今の時代は、押す前に怪しまれる。
まずはネット上に、安心してもらえる材料を置いておくことだ。
仕事を待つ塗装業者ではなく、問い合わせが来る塗装業者へ。
その一歩は、今日の施工写真を一枚載せることからでも始められる。

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